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吉良貴之, 蝶名林亮, 世代間不均衡下の都市倫理

世代間不均衡下の都市倫理

2016年度 第一生命財団・研究助成(奨励研究):第一生命のページはこちら

このページでは、研究プロジェクトについての情報(成果物、イベントなど)を掲載していきます。

研究代表者: 吉良 貴之(宇都宮共和大学専任講師、法哲学)
研究分担者: 蝶名林 亮(創価大学非常勤講師、倫理学):researchmap

 ほか、連携研究者・研究協力者として何人かの方々にご参加いただく予定です。


【イベント】

吉良貴之, 蝶名林亮, 世代間不均衡下の都市倫理

2016年10月29日(土)10th International Conference on Applied Ethics
Session "Urban Environmental Ethics," Hokkaido University, Sapporo, Japan.
 1. KIRA Takayuki "On Population Ethics in Urban Aging Society"
 2. CHONABAYASHI Ryo "Some Intergenerational Problems in Urban Restoration"
 3. TAKAGI Tomofumi* "Well-being and Close Relationships"
   * 髙木智史(一橋大学大学院法学研究科博士課程、法哲学)

2016年10月16日(日)日吉哲学倫理学研究会(慶應義塾大学@日吉)
 1. 蝶名林亮「都市保存に関する倫理的諸問題」


【研究の目的・意義】

 近年、日本を含む多くの先進諸国では、①少子高齢化、②都市への人口集中が急速に進行している。現代の都市生活は、いわば人口バランスが縦と横の両方で崩れたものとなっている。本研究はそうした現代日本の都市における①世代間不均衡、②都市と地方の不均衡を前提とし、そこでの生活向上のための法制度のあり方、およびその倫理的基盤を探求するものである。
 古来より、人々の倫理や道徳のあり方は、その人々が実際に住まう具体的な共同体という場において育まれ、そして変容していくものと考えられてきた。急速に進んだ都市への人口集中は、多様なバックグラウンドを有する人々が密集しながらいかにして摩擦なく過ごすことができるかという問題を生み出した。それに対する応答として近代的な宗教的寛容論が唱えられ、やがてリベラリズム(自由主義)につながり、また現代における多文化主義といった倫理思想潮流として展開することとなった。しかし、こうした思想は暗黙のうちに年齢的に均質な都市住民を念頭に置いていたことは否めない。
 では、年齢的に多様な人々、さらにいえばその年齢構成がきわめて不均衡な状態にあり、高齢者層の生活が若年層の重い負担によって支えられている都市の現状において、いかなる倫理が可能なのか。そこで剥奪感を有する若年層にとって、そしてこれから生まれてくる将来世代にとって魅力的なまちづくりはいかにして可能か。本研究はそうした問題意識のもと、従来のいわば年齢的に均質な水平的な都市倫理から、現代の世代間不均衡のもとでの垂直的な都市倫理、そして法制度のあり方を探求する。


【研究計画】

 本研究の体制は、研究代表者の吉良貴之が法哲学の立場から都市における世代間倫理、およびそれを実現する法制度のあり方を探求し、また研究協力者の蝶名林亮が倫理学の立場から、そうした不均衡状態の都市生活における新しい倫理的基盤の可能性を探求する。
 代表者の吉良が所属する宇都宮共和大学シティライフ学部はその名の通り、都市生活・まちづくりの新しいあり方を問うことを主眼とする学部であり、都市政策に精通した学際的・文理融合的な研究者・実務家が多く所属している。本研究のスタート地点は世代間不均衡下の都市倫理であるが、それを単なる思弁的探求に終わらせることなく、実践に接続するための基盤を構築しなければならない。吉良が専門とする法哲学は哲学的探究と法政策学的探求を接合する点で一日の長があるが、それにとどまらず、都市政策の研究者・実務家とつねに意見交換できる環境にあり、その点で他の研究にはないアドバンテージがある。

(1) 現代の都市生活はどのようにして人々の倫理性に関わるか(蝶名林)

 人々の倫理性が育まれる場所が持つ条件として、(a)判断が難しい倫理的選択を求められる、(b)倫理的に推奨される行為を行う機会がある、(c)倫理的な誤りに気が付くことができる、などが挙げられる。しかし都市部での人間関係の希薄化(近所付き合いの減少、プライバシー意識の強化など)は、こうした倫理的学習の機会を人々から奪っているともいえる。その一方、たとえば近時の渋谷区同性パートナーシップ条例などに象徴的に見られるように、それまで不可視化されていた多様なマイノリティへの意識が高まる機会が、人口の過密化によってこそ可能になる場合もある。本段階ではこのように、人々の倫理性が育まれる条件について現代の都市生活に特有のものがあるかどうか、倫理学の知見をもとに考察する。

(2) 世代間不均衡下の都市倫理と、それに応じた法政策の探求(吉良)

 次に、(1) で得られた都市倫理の基盤をもとに、現代の少子高齢化社会における都市倫理の可能性を考察する。いわゆる「世代会計(generational account)」によると、現代の日本では税負担と社会保障の額として計算される受益と負担の収支が世代によって数千万円の不均衡を示している。こうした状況で、高齢者層を支えることになる若年層に魅力的な都市生活が可能だろうか。(1)で得られた知見をもとに高齢者層・若年層双方のとっての新たな世代間都市倫理の可能性を探求し、実行可能な法制度の提言を目指す。

【本研究に関わる国内外の状況】

 研究代表者の吉良、研究協力者の蝶名林はともに現代の英米系の倫理学・法哲学を専門とする研究者であり、本研究でもそこでの都市倫理・世代間倫理研究の知見を摂取しながら、日本の具体的な都市問題にあてはめていくアプローチを取る。いずれもいわゆる応用倫理学(applied ethics)の一領域としての環境倫理学として発展してきた歴史があり(重要な論者として、K. S. Shrader-Frechette や Yi-Fu Tuanなど)、日本の近年の若手研究者による意欲的な著作として吉永明宏『都市の環境倫理』(勁草書房、2014年)などがあげられる。本研究でもこの研究動向の批判的検討が中心的作業となるが、本研究は「世代間不均衡下の都市倫理」と明確なテーマ設定を行い、具体的な法政策提言を目指すことにより、理論的体系化と実践的有用性を接合するものである。
 法政策提言にあたっては、研究代表者が参加した内閣府「財政と社会保障の持続可能性に関する「制度・規範ワーキング・グループ」」での経験をもとに、世代間正義を国家レベル・地方自治体レベルで具体化する法政策に資することを目指す。


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