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創価大学法学部 2014年度・後期・金曜1/2限「法思想史」(90分×2コマ×15回 担当:吉良貴之)

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【概要】

 「法思想史」の概説的な講義を行う。
 (1) 古代ギリシャ・ローマから、第二次世界大戦前後までの法思想を、そのときどきの時代状況とあわせて理解する。明治期日本での法の継受や、東アジア諸国での法思想にも触れ、立体的な理解を図るものとする。「昔の思想」はいまから見るとぴんとこないものも多いかもしれないが、それぞれがどういった時代状況や学問的課題に立ち向かっていたのか、各思想家に「なりきって」理解するのはとてもエキサイティングな体験になるだろう。
 (2) 思想史を学ぶ意義は、単に暗記をするのではなく、現在の思考枠組みからはみ出す「過剰」に触れることにある。そこから、現在のさまざまな法概念について「違ったあり方もありえた」ことを実感してほしいと思う。それにあたっては、「自由」「権利」「民主主義」「立憲主義」といった、現代の重要なキーワードが歴史的にどう変遷してきたのかを見ていくこととする。過去の思想家に「なりきる」一方で、現代的な問題関心から歴史を見る姿勢も身につけてほしい。
 なお、20世紀後半の現代的な問題については、前期開講科目「法哲学」で扱うので、できるだけ両方を履修することをおすすめする(もちろん「法思想史」単独での履修でもまったく差し支えない)。また、各種の法理論、(法・政治)哲学・思想や、実定法・政治系科目の知識は特に前提としない。

【学習目標】

 (1) 講義で扱った法思想史の基本的な知識を全般的に身につけること。
 (2) 特に重要ないくつかの法思想について(選択式)、それぞれがどのような時代状況や学問的課題に取り組んでいたのかを、他の対立する法思想と比較しながら述べられること。

【内容と予習課題】

01. イントロダクション:法思想史を学ぶ意義

 本講義でどういったトピックを扱うかを概観し、「法思想史」を学ぶ意義について理解する。
 → 指定教科書・参考書のうち、気になるところにざっと目を通して「法思想史」のなんとなくのイメージを持っておくこと。また、前期「法哲学」履修者は、内容をよく復習し、歴史的にたどってみたい論点について整理しておくこと。

02. 法思想史方法論

 「思想史」を学ぶには大きく分けて、(1) 当時の思想家になりきってその課題を理解する、(2) 現代の課題に「使う」ために歴史を参照する、という2つのあり方がある。本講義はその「往復運動」を目指すが、それぞれの長所・短所を各種の方法論から理解する。
 → 指定教科書・参考書のうち、方法論に関する部分(序章など)に目を通し、「何のために歴史を学ぶのか」について自分なりのイメージを持っておくこと。

03. 古代ギリシャの法思想

 神話に現れている法的問題から始め、ソクラテス、プラトン、アリストテレスといった思想家における「法」的なものをさぐる。
 → 指定教科書・参考書の該当部分を予習すること。また、前回までの議論をよく復習し、各回のつながりについて考えておくこと(以下毎回、同様)。

04. 古代ローマの法思想

 ストア派自然法論の影響を中心に、古代ギリシャの法思想がローマ法の成立にどのようにつながったかを理解する。
 → 指定教科書・参考書の該当部分を予習すること。

05. ローマ法の成立と展開 (1)

 ローマ法の成立と発展過程について概観する。
 → 指定教科書・参考書の該当部分を予習すること。

06. ローマ法の成立と展開 (2)

 引き続き、ローマ法の成立と発展過程について概観する。
 → 指定教科書・参考書の該当部分を予習すること。

07. キリスト教自然法論 (1)

 キリスト教法思想の基本的な特徴を概観した後、アウグスティヌスの(法)思想を中心に、キリスト教自然法論の成立過程を理解する。
 → 指定教科書・参考書の該当部分を予習すること。
 → アウグスティヌス、ローマ法大全

08. キリスト教自然法論 (2)

 トマス・アクィナスの(法)思想、およびその後のスコラ哲学の発展について、とりわけ後の法思想に強い影響を与えた面について理解する。
 → 指定教科書・参考書の該当部分を予習すること。
 → アクィナス、スコトゥス、オッカム、普遍論争

09. 中世の法と宗教改革 (1)

 ヨーロッパ中世の法のあり方について、ローマ法の継受と各国独自の法発展の緊張関係のもとに理解する。
 → 指定教科書・参考書の該当部分を予習すること。
 → 古ゲルマン法、人文主義、ボローニャ大学、コモンロー

10. 中世の法思想と宗教改革 (2)

 ルネッサンスと宗教改革が各国の法思想にどのような影響を与えたのかを概観する。また、その前提として教会法(カノン法)の特徴についてもおおまかな見取り図を得る。
 → 指定教科書・参考書の該当部分を予習すること。
 → マキャヴェリ、ルター、カルヴァン

11. 近代自然法論

 絶対主義法思想以降の近代自然法論の発展について、「近代」がいかにして成立したかという観点から理解する。
 → 指定教科書・参考書の該当部分を予習すること。
 → グロチウス、モンテスキュー

12. 社会契約論

 ホッブズ、ロック、ルソーといった論者の「社会契約論」を取り上げ、近代的国家観の成立過程を概観する。
 → 指定教科書・参考書の該当部分を予習すること。

13.ドイツ観念論と法思想

 啓蒙期自然法思想を受け、カントとヘーゲルがそれぞれどのような法思想を展開したのかを理解する。
 → 指定教科書・参考書の該当部分を予習すること。

14. ドイツ近代法学の成立と発展

 主にサヴィニーの法思想を素材としながら、ドイツ近代法学の成立を「歴史法学」「法典編纂論争」「パンデクテン法学」「概念法学」などのキーワードをもとに理解する。
 → 指定教科書・参考書の該当部分を予習すること。
 → サヴィニー、プフタ、イェーリング

15. ドイツ法学の革新運動

 自由法運動、利益法学といった法思想の革新運動について、後のアメリカ法思想への影響なども念頭に置きながら理解する。
 → 指定教科書・参考書の該当部分を予習すること。
 → エールリッヒ、カントロヴィッツ、ヘック

16. 20世紀前半ドイツの法思想

20世紀前半ドイツの法思想(ワイマール期~ナチス期)について、特に「法実証主義の功罪」という観点から理解を深める。
 → 指定教科書・参考書の該当部分を予習すること。
 → ケルゼン、シュミット、ラートブルフ

17. スコットランド啓蒙思想と功利主義

 スコットランド啓蒙思想の特徴、および功利主義法思想の展開について理解する。
 → 指定教科書・参考書の該当部分を予習すること。
 → スミス、ヒューム、ベッカーリア、ベンサム

18. 分析法学から歴史法学へ

 引き続き、近代イギリスの法思想史を概観する。
 → 指定教科書・参考書の該当部分を予習すること。
 → オースティン、メイン

19. アメリカ法思想

 イギリス法(思想)との比較のうえで「新国家」アメリカでどのような法思想が発展したかを理解する、プラグマティズム法学やリアリズム法学を主に扱う。
 → 指定教科書・参考書の該当部分を予習すること。
 → ホームズ、パウンド、フランク

20. 社会主義法思想

 マルクス主義法理論、社会民主主義法理論、ソヴィエト法理論について概観する。
 → 指定教科書・参考書の該当部分を予習すること。
 → マルクス、ベルンシュタイン、レーニン、パシュカーニス

21. 民主主義の法思想史 (1) 概観

 「民主主義」思想について、古代から啓蒙思想期の論者の議論を中心に、歴史的にどのように発展してきたのかを理解する。
 → 指定教科書・参考書の該当部分を予習すること。

22. 民主主義の法思想史 (2) 自由主義との緊張

 「民主主義」思想について、特に18~19世紀の議論を中心的な素材とし、「自由主義」との緊張関係のもとに理解を深める。
 → 指定教科書・参考書の該当部分を予習すること。

23. 立憲主義の比較法思想史 (1) 概観

 「立憲主義」思想がどのように発展してきたのか、啓蒙思想期から現代の論者のそれぞれの議論から理解する。
 → 指定教科書・参考書の該当部分を予習すること。

24. 立憲主義の比較法思想史 (2) 比較憲法思想史

 「立憲主義」思想について、各国の憲法にそれが具体的にどのように現れたのか、比較憲法思想史の問題として理解を深める。
 → 指定教科書・参考書の該当部分を予習すること。また、各出版社から出ている『世界憲法集』などに目を通しておくこと。

25. 近代日本の法思想 (1) 西洋法の継受

 明治期における西洋法の継受のあり方と、それを受けた日本の法思想の発展について、いくつかの具体的トピックを素材にして理解する。
 → 指定教科書・参考書の該当部分を予習すること。

26. 近代日本の法思想 (2) 憲法思想史

 明治憲法期における各種の憲法思想について理解する。
 → 指定教科書・参考書の該当部分を予習すること。
 → 穂積八束、上杉慎吉、美濃部達吉、筧克彦

27. 世界の法思想 (1) 東アジアの法思想

 東アジア諸国の法思想について、特に近代のあり方を日本との比較のうえで理解する。
 → 指定教科書・参考書の該当部分を予習すること。

28. 世界の法思想 (2) イスラム圏ほか

 イスラム圏の法思想など、これまでの講義でカバーしていない地域の法思想史について概観する。
 → 指定教科書・参考書の該当部分を予習すること。

29. まとめ・ディスカッション (1)

 これまでの講義内容を踏まえたうえで、法思想史を学ぶ意義についてまとめなおす。また、要望のあるテーマについて補足する(例:ジェンダーの法思想史)。
 → 「法思想史を学ぶ意義」について自分なりの考えをまとめておくこと。また、特に議論したいトピックがあれば積極的に提案してほしい。

30. まとめ・ディスカッション (2)

 これまでの講義内容を踏まえたうえで、法思想史を学ぶ意義についてまとめなおす。また、要望のあるテーマについて補足する(例:ジェンダーの法思想史)。
 → 「法思想史を学ぶ意義」について自分なりの考えをまとめておくこと。また、特に議論したいトピックがあれば積極的に提案してほしい。

【成績評価】

・期末試験によって評価する。(1) 講義で扱った各種の法思想について、基本的な知識を身につけていること。(2) 各思想がどのような時代状況・学問的課題に取り組んでいたのかを述べられること。
・講義中のディスカッションに積極的に参加した者については一定の範囲(上限20%)で加点を行う。

【参考文献】

・教科書: 田中成明ほか『法思想史(第2版)』(有斐閣、1997年、1890円)
・参考書: 笹倉秀夫『法思想史講義(上・下)』(東京大学出版会、2007年、3780円+3990円)
・その他の参考文献は講義中に適宜、紹介する(できるだけ CiNii などのネット上で読める論文にして負担を減らす)。
・講義では毎回、詳細なレジュメ配布またはスライド上映を行う。
・法哲学・政治理論や実定法上の知識は特に前提とせず、初学者に配慮した講義とする。

【注意事項】

・ディスカッションを重視するので、積極的な参加が望ましい。単位取得にあたって必須とはしないが、議論するのは何より楽しい!(*^-^*)と思う。
・各自の問題関心を発表(プレゼン)してもらい、全体で議論することも有益と思われるので、積極的な立候補を望みたい。
・参加者の興味関心に応じて、講義内容は柔軟に変更する。
・講義にあたっては、外部講師の招聘、映像素材の使用などを適宜検討する。
・質問等は講義の前後、およびメールで受け付けるので、遠慮なく行ってほしい。
・吉良のホームページには、連絡事項や配布資料を掲載するので、積極的に活用してほしい。なお、重要な連絡事項は必ず、学内掲示板等で確認すること。
・単位取得要件とは関係しないが、発展的内容を扱う自主ゼミナールの実施も検討する。他大学で行った例としてこちらなど。

ご質問などありましたら遠慮なくどうぞ。
→ 教員連絡先


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