授業計画や連絡事項を書いたり、配布物を置くためのページです。
授業の進展に応じて更新します(参考文献の紹介、課題の提示など)。
公式シラバスはこちら。※ 内容は同じです。
法哲学の原理的な思考を理解し、多様な視点を身に付け、それを自身の関心のある具体的テーマ、または実定法や政治学系の諸科目に応用できるようになること。
現代法哲学の基本的な議論(主として戦後の英米法哲学の流れ)を押さえたうえで、それを各種の現代的問題に応用することによって、原理的かつ多様な思考法を身につける。具体的に扱うテーマや文献は受講者の希望に応じて柔軟に変更する。ただし、1)グローバル化時代の、2)進歩する科学技術のもとでの、法、国家、民主主義、立憲主義といったもののあり方の変容を見定めることをつねに念頭に置くものとする。
法哲学的な思考のあり方を、最近のニュースや判例を素材にして実践してみる。
ジョン・ロールズ『正義論』(原著1971年)をもとに、現代正義論の基本的な発想を理解する。
ロールズ正義論に対する各種の批判や、その他の正義論的立場(功利主義、リバタリアニズム、etc.)を紹介し、今後の議論の「道具立て」を揃える。
いまだ生まれざる将来世代との規範的関係を考えるにあたっての、ロールズ正義論の可能性と限界を内在的に理解する。
ロールズ以降の各種の正義論からのアプローチが、どのようなメリット、デメリットを有しているかを議論する。
前2回の議論を踏まえ、公的年金のあり方など、世代「内」の正義の問題が問われうる場面について、一貫した議論が可能かどうかを考察する。
グローバリゼーションにともなう規範的問題にどのようなものがあるかを確認し、各種の正義論の応用可能性に向けた見通しを得る。
国境を超えた人の移動に関わる、いわゆる「移民・難民の正義論」を取り上げ、それが現代の「国民国家」のあり方にどういった問題を突きつけているかを理解する。
地球環境問題にともなう「気候の正義(climate justice)」論を取り上げ、たとえばパリ協定の実効化に向けた世界規模での取り組みがいかにして可能か(または、そもそも必要か)について議論する。
現代の科学技術の進展が、法/正義のあり方にどのようなインパクトをもたらしうるか、見通しを得る。
不確実性を不可避的にともなう先端科学技術問題を「法」はどのように取り扱うことができるか(例:原発差止訴訟)を考え、現状の法制度(たとえば裁判における当事者主義)の可能性と限界を議論する。
AI によるビッグデータ解析、ゲノム解析といった「個人化」技術が進歩していくなかで、一般性を特徴とする法的諸概念や、リスクを共有する仕組みとしての福祉国家がどのように変容するかを考える。
「法とは何か」を問う「法概念論」と呼ばれる領域における議論枠組みを確認し、それが将来、どういった課題に直面しうるかを議論する。
「法」に代わりうる統治のあり方(いわゆるアーキテクチャ論など)を検討しながら、今後の「法」の可能性を考え、授業全体のまとめとする。
・最終レポート(40%):講義を踏まえたうえでテーマを設定し、自分なりに整合的と考える法・政治哲学的立場から一貫した論述ができるかどうかを問う。
・中間レポート(30%):いくつかの課題を出し、授業内容の基本的な理解を問う。
・平常点(30%):授業への参加状況、議論への積極性に基づいて評価する。
・特定の教科書は使用しない。毎回、資料配布またはスライド上映を行う。
・課題文献、参考文献は講義中に適宜、指示する。できるだけインターネット上で読める論文にして、受講者の負担を減らすつもりである。
・講義とディスカッションは日本語で行うが、課題文献は英語のものを指定する場合がある。
・本講義全体に関わる参考書は以下の通り。
1.瀧川裕英・宇佐美誠・大屋雄裕『法哲学』(有斐閣、2014年):
2.瀧川裕英(編)『問いかける法哲学』(法律文化社、2016年):
3.安藤馨・大屋雄裕『法哲学と法哲学の対話』(有斐閣、2017年):
4.片桐直人・松尾陽・岡田順太(編)『憲法のこれから』(日本評論社、2017年):
瀧川ほか『法哲学』は、現代の英米系法哲学の主要トピックを網羅しているので、全体像をとにかくつかみたい受講生には通読を薦める(辞書的な利用でも差し支えない)。瀧川編『問いかける法哲学』は様々な具体的問題をもとに「法哲学的な問い」がどのように成立するか、多くの好例を収める。「どう議論すればよいか」をつかみたい受講生には先にこちらを読むことを薦める。安藤・大屋『法哲学と法哲学の対話』は、法哲学内での多様な立場の存在を理解したり、法哲学が実定法の諸問題にどのように切り込むかを理解するうえで絶好の書である。片桐ほか編『憲法のこれから』は、グローバル化の進展、科学技術の進歩のもとで「憲法」がどういった多様な課題に直面しているかを示すものであり、本授業での「問い」の立て方にもおおいに参考になる。(2と4は吉良も分担執筆した。)
・法哲学・政治哲学、および実定法諸科目の知識は特に前提としない。研究科・学部にかかわらず、現代的な社会問題について「ちょっと変わった」角度から考えてみたいという意欲のある受講生を歓迎する。
・受講者の希望により、講義計画は柔軟に変更する。ここに書いてある計画は「最大限」のものとして理解してほしい。「それよりこういった問題を議論したい」という積極的な提案を望みたい。
・参考文献を講義中に適宜、指示するので、十分に予習すること。また、時事問題を素材として多く取り上げるので、日頃からニュースなどによく目を通しておくこと。
・法哲学は「対話」による思考の深化を何より重視する学問であるため、講義中にできるだけディスカッションの時間をとる。積極的な参加を期待したい。単位取得要件とはしないので無理する必要はないが、議論に参加するのは何より楽しいはずである。
・質問はできるだけ講義中に行ってほしいが、講義の前後や、メールでも受け付けるので遠慮しないように。
・それでもよく「法哲学」のイメージがわかない、いったい何の役に立つの?という方は、【質問サイト ask.fm まとめ】などもご参考に。こちらで質問してくださってもかまいません。
・参加者の希望に応じて自主ゼミナールも開催する。他大学で行った例としてこちらなど。
ご質問などありましたら遠慮なくどうぞ。
→ 教員連絡先