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創価大学法学部 2018年度・後期・金曜2限「法思想史」(担当:吉良貴之)

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【概要】

 「法思想史」の概説的な講義を行う。
 (1) 古代ギリシャ・ローマから、第二次世界大戦前後までの法思想を、そのときどきの時代状況とあわせて理解する。明治期日本での法の継受や、東アジア諸国での法思想にも触れ、立体的な理解を図るものとする。「昔の思想」はいまから見るとぴんとこないものも多いかもしれないが、それぞれがどういった時代状況や学問的課題に立ち向かっていたのか、各思想家に「なりきって」理解するのはとてもエキサイティングな体験になるだろう。
 (2) 思想史を学ぶ意義は、単に暗記をするのではなく、現在の思考枠組みからはみ出す「過剰」に触れることにある。そこから、現在のさまざまな法概念について「違ったあり方もありえた」ことを実感してほしいと思う。それにあたっては、「自由」「権利」「民主主義」「立憲主義」といった、現代の重要なキーワードが歴史的にどう変遷してきたのかを見ていくこととする。過去の思想家に「なりきる」一方で、現代的な問題関心から歴史を見る姿勢も身につけてほしい。
 なお、20世紀後半の現代的な問題については、前期開講科目「法哲学」で扱うので、できるだけ両方を履修することをおすすめする(もちろん「法思想史」単独での履修でもまったく差し支えない)。また、各種の法理論、(法・政治)哲学・思想や、実定法・政治系科目の知識は特に前提としない。

【学習目標】

 (1) 講義で扱った法思想史の基本的な知識を全般的に身につけること。
 (2) 特に重要ないくつかの法思想について(選択式)、それぞれがどのような時代状況や学問的課題に取り組んでいたのかを、他の対立する法思想と比較しながら述べられること。

【内容と予習課題】

01. イントロダクション:法思想史を学ぶ意義と方法

 本講義でどういったトピックを扱うかを概観し、「法思想史」を学ぶ意義について理解する。
 → 指定教科書・参考書のうち、気になるところにざっと目を通して「法思想史」のなんとなくのイメージを持っておくこと。また、前期「法哲学」履修者は、内容をよく復習し、歴史的にたどってみたい論点について整理しておくこと。

02. 古代ギリシャの法思想

 神話に現れている法的問題から始め、ソクラテス、プラトン、アリストテレスといった思想家における「法」的なものをさぐる。
 → 指定教科書・参考書の該当部分を予習すること。また、前回までの議論をよく復習し、各回のつながりについて考えておくこと(以下毎回、基本的に同様)。
 → 古代ギリシャの思想家につき、興味のあるものを岩波文庫や青空文庫などで読んでおくこと。
 → ソクラテスの「最後の闘い方」は適切だっただろうか? 自分だったらどうしただろうか?

03. 古代ローマの法思想

 古代ローマ法がどのように成立・発展したのかを当時の時代状況を踏まえて理解する。
 → ストア派自然法論
 → 現代日本の法にローマ法的要素はどんなふうに残っているだろうか?

04. キリスト教自然法論

 キリスト教法思想の特徴を概観し、アウグスティヌス、トマス・アクィナスといった論者の議論のうち、特に後世に大きな影響を与えた部分について理解を深める。
 → パウロ、アウグスティヌス、アクィナス
 → キリスト教的な世界観の特徴はどのようなものだろうか?

05. 中世の法思想と宗教改革

 ルネッサンス、宗教改革がヨーロッパ法思想にどのような影響を与えたのかについて理解する。
 → マキャヴェリ、ルター、カルヴァン
 → 「近代」の始まりにはどういったものがあるだろうか?

06. 近代自然法論

 絶対主義法思想以降の近代自然法論の発展について、「近代」がいかにして成立したかという観点から理解する。
 → グロチウス、モンテスキュー
 → 「法の支配」「立憲主義」「権力分立」といった考えはどのように始まったのだろうか?

07. 社会契約論 (1)

 ホッブズ『リヴァイアサン』を素材に、社会契約論の基本的発想と近代的国家観のあり方について理解を深める。
 → ホッブズ、コモンロー批判
 → 自然状態で「人は人に対して狼である」という人間観は果たして妥当なものだろうか?

08. 社会契約論 (2)

 ロック、ルソーの社会契約論を取り上げ、ホッブズの議論と比較しながら、「自由」「権利」「民主主義」といった概念の近代的なあり方について理解を深める。
 → ロック、ルソー
 → ロック的民主主義観とルソー的民主主義観、どちらが魅力的だろうか?

09. ドイツ観念論と法思想

 カントとヘーゲルの法思想を取り上げ、両者が啓蒙期自然法論をどのように発展させたのかを理解する。
 → カント、ヘーゲル
 → カントの死刑肯定論、世界政府批判、ヘーゲルの家族論・市民社会論などは現在でも刺激的だが、どこまで通用するだろうか?

10. 近代ドイツ法学の成立と発展

 サヴィニーの法思想を中心に、「歴史法学」「パンデクテン法学」「概念法学」といったキーワードのもと、近代ドイツ法学の成立と発展のあり方を理解する。
 → サヴィニー、プフタ、グリム、イェーリング
 → 歴史法学の発想は魅力的だろうか? 日本に応用するとどうなるだろうか?

11. 近代ドイツ法学の革新運動

 自由法運動、利益法学、法社会学といったドイツ法学の革新運動を概観し、後の法思想(特にアメリカ)への影響を念頭に置きながら理解を深める。
 → カントーロヴィツ、ヘック、エールリッヒ
 → 「社会の中の法」に目が向けられるようになったのはなぜだろうか?

12. スコットランド啓蒙思想と功利主義

 コモンローを中心とするイギリス法の基本的発想を概観した後、スコットランド啓蒙思想や功利主義による革新運動の意義を理解する。
 → スミス、ベンサム、ミル
 → スミス、ヒューム、ベッカーリア、ベンサム

13. アメリカ法思想

 「新国家」アメリカでどのような法思想が発展したのか、ドイツ・イギリスでの法学革新運動をふまえ、プラグマティズム法学やリアリズム法学を中心に理解を深める。
 → ホームズ、パウンド、フランク
 → 「社会変革の手段」としての法のあり方について考える。

14. 民主主義/立憲主義の法思想史

 これまでの各国法思想史を振り返りながら、近代的な「民主主義」「立憲主義」がどのような形で発展してきたのかを理解する。
 → 指定教科書・参考書のこれまでの該当部分を復習すること。

15. 日本・東アジアの法思想史

 日本・東アジアの法思想の基本的発想を概観した後、近代以降の西洋法の継受のあり方について理解を深め、本講義全体のまとめとする。
 → これまでの講義内容を復習し、日本の場合はどうだったか?を考えてみること。

【成績評価】

・期末試験によって評価する。(1) 講義で扱った各種の法思想について、基本的な知識を身につけていること。(2) 各思想がどのような時代状況・学問的課題に取り組んでいたのかを述べられること。
・講義中のディスカッションに積極的に参加した者については一定の範囲(上限20%)で加点を行う。

【参考文献】

・教科書: 田中成明ほか『法思想史(第2版)』(有斐閣、1997年、1890円)
・参考書: 長谷部恭男『法とは何か――法思想史入門(増補新版)』(河出書房新社、2015年、1512円)
      森村進編『法思想の水脈』(法律文化社、2016年、2700円)
      大野達司・森元拓・吉永圭『日本近代法思想史入門』(法律文化社、2016年、3024円)
・その他の参考文献は講義中に適宜、紹介する(できるだけ CiNii などのネット上で読める論文にして負担を減らす)。
・講義では毎回、詳細なレジュメ配布またはスライド上映を行う。
・法哲学・政治理論や実定法上の知識は特に前提とせず、初学者に配慮した講義とする。他学部生も歓迎する。

【注意事項】

・ディスカッションを重視するので、積極的な参加が望ましい。単位取得にあたって必須とはしないが、議論するのは何より楽しい!(*^-^*)と思う。
・各自の問題関心を発表(プレゼン)してもらい、全体で議論することも有益と思われるので、積極的な立候補を望みたい。
・参加者の興味関心に応じて、講義内容は柔軟に変更する。
・講義にあたっては、外部講師の招聘、映像素材の使用などを適宜検討する。
・質問等は講義の前後、およびメールで受け付けるので、遠慮なく行ってほしい。
・吉良のホームページには、連絡事項や配布資料を掲載するので、積極的に活用してほしい。なお、重要な連絡事項は必ず、学内掲示板等で確認すること。
・単位取得要件とは関係しないが、発展的内容を扱う自主ゼミナールの実施も検討する。他大学で行った例としてこちらなど。

ご質問などありましたら遠慮なくどうぞ。
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