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ICU2017

ICU 2017年度・冬・金曜567限「法哲学(LAW312)」(70分×3コマ×9回 担当:吉良貴之)

連絡事項を書いたり、配布物などを置くためのページです。
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【期末レポートについて】

 課題: 講義内容に関わるテーマを自由に設定し、各種の法・政治哲学的立場を比較検討したうえで、説得的な主張を展開せよ。具体的な素材(判例やニュースなど)から出発して議論を深めてもかまわないし、抽象的な概念分析や、思想史的検討によって展開してもかまわない。
 字数: 3000字以上(英語の場合はそれに相当する分量)。
 形式: ワードファイル(.docx)をメール添付にて提出すること(それ以外のソフトを使う場合は、PDF にして一般的に読める形にしてください。一太郎とかは困ります)。提出にあたっては jj57010@gmail.com と tkira26@yahoo.co.jp の両方に送ること。受け取った場合は1日以内に受領の返事を出します。また、事情により紙媒体での提出を希望する者は事前に相談すること。
 〆切: 2018年3月9日(金)24時(ギリギリの設定なので、延長はできません)。
 備考: テーマ選びに困った場合、論述に不安がある場合などは、〆切1週間前までを目安にメール等で遠慮なく相談してください。法哲学でどういったことが議論されているかを知るには、『法哲学年報』が便利です。ほか、ICU 学内のオンラインジャーナルも積極的に利用してください。

評価基準:
 (1) 法哲学の授業内容を踏まえたうえで、独創的なテーマ設定がなされているかどうか。
 (2) 複数の先行研究を適切に比較検討したうえで、自身の主張を説得的に展開できているかどうか。
  # ひたすら自説を押し出すだけ、というものは評価が低くなります。比較の軸を作ってください。
  # 狭義の「法哲学」に限定する必要はありませんが(憲法学ほか実定法学、哲学・倫理学、政治哲学、社会学などの文献も積極的に参照してください)、たとえば、憲法の議論しか参照していない、といったレポートは評価が低くなります。
 (3) 学術的な論文としての形式が守られているかどうか。
  # 先行研究を適切に引用・紹介し、注をつけ、文献一覧を作ってください。
  # ウェブサイトからのコピペ、他の科目のレポートの流用などは不正行為とします。


【概要】

 「法哲学」の入門的な講義を行う。英米の現代的な議論を中心に、各種の法・政治哲学的立場を踏まえ、下記の内容に記してあるような具体的論点に即して法哲学的思考を身に付ける。なお、法律や判例の具体的な知識は前提としないので、法・政治メジャー以外にも、社会問題について変わった角度から考え、議論に参加してみたいと思う者の履修を歓迎したい。(使用言語 J/E)

【学習目標】

 さまざまな法・政治哲学的立場の発想をふまえたうえで、自分なりに整合的と考える正義論・法概念論の立場から、各種の具体的問題について見解を述べられるようになること。また、実定法および政治学関係科目ほかでの論点にもその思考方法を応用できるようになること。

【内容】

1. 法哲学を学ぶ意義、正義 (1):ロールズ『正義論』の衝撃
 現代法哲学の議論状況を概観し、最近の判例などを素材に法哲学的思考を「実践」してみることで、法を哲学的・原理的に吟味する意義を考える。その後、ロールズ『正義論』の内容を概観し、1970年代以降の時代状況のもとで理解する。
 【内容】 ロールズ『正義論』、リベラリズムの基本的発想
 【問い】 ロールズ正義論の魅力と限界はどのような点にありますか?

2. 正義 (2): ロールズの批判者たち
 ロールズ以降の正義論について、各種の立場を理解する。
 【内容】 リバタリアニズム、功利主義、共同体論、各種の平等論
 【問い】 あなたが最も魅力的だと思う正義論上の立場は何ですか?

3. 正義 (3): 世界正義と世代間正義
 現実的な社会問題における正義のあり方を考え、第2回で扱った各種の正義論上の立場の妥当性を吟味する。
 【内容】 グローバルな正義、世代間の正義、科学技術倫理、戦争責任論、死刑の是非
 【問い】 第2回で扱った各種の立場からはそれぞれ、現実の社会問題についてどのようなことがいえますか?

4. 自由
 「自由」について、各種の法・政治哲学的立場から概念の整理を行う。たとえば「ある行為ができる」という「可能」と「自由」はどう違うか、といった論点について考えを深める。
 【内容】 積極的|消極的自由、「割れ窓理論」など新しい刑事政策論、ダンス規制
 【問い】 「自由」が望ましいとすれば、それは「なぜ」? また、たとえば犯罪者にGPS装着を義務付けるといったことは許容されますか?

5. 権利
 「権利」について、各種の法・政治哲学的立場から概念整理を行い、正義論と法概念論の結びつきについて理解を深める。
 【内容】 利益説・意思説、将来世代の権利、動物の権利
 【問い】 将来世代や動物に「権利」があるといえますか? それは誰にどのような義務を課しますか?

6. 民主主義と公共的価値
 法が実現すべき「価値」は客観的・合理的に語りうるものか、またその実現・保障のあり方はどうあるべきかといった問題について理解を深める。
 【内容】 熟議、正統性、立憲主義、改憲問題、裁判員裁判
 【問い】 社会的に望ましい「価値」とはどのようなものであり、またその実現のために「民主主義」はよい仕組みといえますか? また、そこでの裁判所の役割はどういうものですか? 「裁判員裁判」は両者を補うものといえますか?

7. 法概念論 (1) 19世紀ドイツ法思想史からケルゼンへ
 法実証主義論争の「前史」としての19世紀ドイツ法思想史を概観したうえで、ケルゼンの法理論が何を目指していたのかを理解する。
 【内容】 歴史法学、法典論争、生ける法、法段階説、リアリズム法学
 【問い】 19世紀ドイツの法典論争~法学革新運動を踏まえると、ケルゼン理論の意義はどのような点に見出だせますか? また、彼の「法学の科学化」「イデオロギー批判」といったモチーフは現代でも意義があるといえますか?

8. 法概念論 (2) ハート・ドゥオーキン論争とその後
 ハート『法の概念』以降の英米の法実証主義論争がどういった点をめぐって対立しているのか、この講義全体のまとめとなるように理解する。
 【内容】 ハート・ドゥオーキン論争、インテグリティとしての法、権威としての法
 【問い】 ハート、ドゥオーキン、ラズなどの論者は法のどのような面を強調しているといえますか? また、各種の見解を踏まえると、「遵法義務の有無」「悪法も法か?」といった問題にどのようなアプローチができますか?

9. まとめ・ディスカッション
 各種のアクチュアルな問題を考察していくなかでこれまでの議論の実践的意義をまとめ直す。ゲスト講師招聘予定。

【成績評価】

・期末レポートによって評価する。講義を踏まえたうえでテーマを設定し、自分なりに整合的と考える法・政治哲学的立場から一貫した論述ができるかどうかを問う。
・講義中のディスカッションに積極的に参加した者については一定の範囲で加点を行う。

【参考文献】

・特定の教科書は指定しない。
・法哲学・政治理論や実定法上の知識は特に前提とせず、初学者に配慮した講義とする。
・講義全体にかかわる文献として、以下など。
 中山竜一『二十世紀の法思想』(岩波書店、2000年)
 瀧川裕英・宇佐美誠・大屋雄裕『法哲学』(有斐閣、2014年)
 W・キムリッカ『現代政治理論(新版)』(日本経済評論社、2005年)
・その他の参考文献は講義中に適宜、紹介する。Q&Aサイトもご参考に。
・毎回、一定の reading assignment を課すので、よく予習することが望ましい。

【使用言語】

・講義とディスカッションは基本的に日本語で行う。
・ただし、毎回の reading assignment には必要に応じて英語文献を指定する場合もある。

【注意事項】

・法律や判例などの知識は前提としないので、法・政治メジャー以外の学生も積極的に受講してほしい。各種の社会問題について、普段とは変わった角度から考えてみたいと思う者であればメジャーを問わず歓迎する。
・ディスカッションを重視するので、積極的な参加が望ましい。単位取得にあたって必須とはしないが、議論するのは何より楽しいと思う。
・各自の問題関心を発表(プレゼン)してもらい、全体で議論することも有益と思われるので、積極的な立候補を望みたい。
・参加者の興味関心に応じて、講義内容は柔軟に変更する。
・講義にあたっては、外部講師の招聘、映像素材の使用などを適宜検討する。
・質問等は講義の前後、およびメールで受け付けるので、遠慮なく行ってほしい。
・吉良のホームページには、連絡事項や配布資料を掲載するので、積極的に活用してほしい。なお、重要な連絡事項は必ず、学内掲示板等で確認すること。
・単位取得要件とは関係しないが、発展的内容を扱う自主ゼミナールの実施も検討する。昨年度の内容はこちら

ご質問などありましたら遠慮なくどうぞ。
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